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ラクダ+ライオン+幼子=超人!

 タイトルを見て何のことか分からなかった受験生にはぜひ知っておいてほしいことを話します。

ニーチェのお話です。ニーチェは日本人に最も人気の高い哲学者でしょう。10年に一度はニーチェブームというものが来るそうです。

 彼の人気の秘密は、彼が「アフォリズム(箴言)」という短い言葉で本質を表すよう表現を指向していたこと、またそれが詩的でもあり、哲学っぽく無く、圧倒的に読みやすいことに有ります。哲学者や学者の文章はわざと難しい言葉を使ったり仲間内だけで通じる造語を作ったりして「まだまだお前にはわからんだろう、俺のことは(-ω-)/」みたいなことをする人がいますので、好感が持てます()

 そんな愛される天才、ニーチェが行ったことを一言で言うなら、「人間を精神の奴隷状態から解放した」です。精神の奴隷とはどういうことでしょうか?

 ニーチェは元は厳格な牧師の家に生まれたキリスト教徒です。だからキリスト教の教えは当然深く理解しています。しかし次第にその教えに矛盾を感じるようになります。というより、もうキリスト教の存在が息苦しくなった。なぜなら、キリスト教において、一番大切な真理は常に神の側に有るからです。真理は神の世界に有り、その内容は全て聖書に書かれてあると言うのです。ということは、人間が自分の力で審理を発見することは不可能という事です。学問を究めることは全て無意味になってしまいます。ボスが不死身のRPGを延々とやらされているようなものです。

 

 また、キリスト教以前の古代ギリシャにおいても、真理は神話の中に有りましたし、プラトンも真理はイデア界に有ると言い、合理主義者カントですら「神が居るか居ないかは、人間の認識の範囲外で証明不可能」だとしました(カントの場合、だからそんな証明不可能な世界で勝負せんで人間の理性を活かせる現象界で勝負しようやと言うわけですが)

 

 ニーチェは、そのようにして過去からずっと真理が人間に手の届かない世界(背後世界)に有るってことが気に食わなかったんです。真理は人間の手の届かないところに有る。しかし人間は真理を追い求めるものだ。我々人間は一生そんな手の届かないものを追い求め苦しめ続けられるのだろうか・・と。

 

 そこでニーチェは人間をそんな真理に向かわせるものは何かを追求します。そしてたどり着いたのがキリスト教の原罪です。原罪というのは、アダムとイブが犯した罪で、それはその子孫である我々人類にも等しく及ぶという考え方です。・・・いやいや、ちょっと待てよ!と。祖先が罪人なら子孫も罪人なんて、刑法理論でも一般的な道徳観念から言っても無茶苦茶な話です( ゚Д゚)しかし、キリスト教はそんな無茶苦茶な罪を人類に押し付け、人間は罪人であるという所からスタートします。そしてその罪を全人類に変わって贖罪してくれたからキリストは偉いのです。 

 

 人類の罪を引き受けたキリストに応えるためにも、キリストを信じて洗礼を受けて、聖書の(あるいは教会の)教えに従った生活をしなさいと言うのがキリスト教です。最初に有りもしないマイナスを押し付けておいて、お前が生まれてくる前に俺が助けてやっといたか俺に従えと言うやり方・・どっかの闇金融か暴力団の手口ですよ()しかも真理は聖書や教会が握ってるんですから、人間は反論できません。そして人間は永遠に受動的な存在から抜け出すことは出来ないのです。これがニーチェが人間が精神の奴隷であるといった理由です。

  神が真理をすべて握っているなんておかしい。これは神と人間の代理人という勝手に作った地位を利用して、イイ思いをしている教会が仕組んだ罠だ!ニーチェはそう言い放ち、一人一人の人間が原罪や聖書、教会から解放されて能動的に真理を掴んでいこうという強いメッセージを人類に与えたのです。

 

 では、どうすれば能動的に真理を掴めるのでしょうか。ニーチェはちょっと面白い例えで説明しています。まずニーチェは人間に「超人になれ」と訴えます。超人とは勇気を持って迷いの中にいる自分自身を乗り越えていくポジティブで強い精神力を持つ人間のことです。そんなんなれる方法分かったら苦労しねーわ!・・ってわけで、超人のレシピもニーチェは与えてくれています。それがまさにタイトルに書いたレシピです。

①ラクダになる

②ライオンになる

③幼子になる

以上です\(^o^)/簡単ですね頑張ってください

・・・・・・・(´・ω・`)

 さて、①が表わしているのは重荷に耐えて義務を遂行するという事です。義務無きところに権利なし。超人になるにはまず義務をこなしなさいという事です。義務を果たす精神を身に付けたら、②獅子になって自由をわがものとし、理不尽と思う義務には毅然とした態度でノーを突きつける。義務をこなした人間には自分が信じた価値を打ち立てる権利が有る、だからそれを獲得する強い力を手に入れろと言っているのです。③、幼子にしかできないことが有ります。それは、何の後ろめたさも持たず遊ぶことです。自分が生きていることに純粋に喜びを感じ、今ここに有る自分の世界を肯定して遊ぶ。それこそが人の精神の最終的な形だというのです。こうした自分自身を肯定する強い意志を皆が持つことで世界を動かすのです(力への意思)

 ちなみに、ニーチェは西洋人には珍しく、身体を重視した思想家でもあります。肉体は大きな一つの理性であり、精神はそれに比べれば小さい理性で肉体の道具であると考えます。西洋の常識である精神>肉体という思想は、生きることに背を向けていると言い切ります。人が生きるという事は、肉体を通して大地と結びつき大地とエネルギーの循環を行っていくことだという道教にも似た思想を展開しています。うーん、東洋っぽい(そんなところも、日本人に人気の有る所以なんでしょう)。自分たちが生きる大地を肯定することは自分たちの生きる世界を肯定することにも繋がっているのです。

 ニーチェの思想は日進月歩の現代社会を生きる我々にこそ有益でしょう。日進月歩でテクノロジーが進化していくという事は今の真理が明日には崩れてしまうかもしれないという事です。脳死、臓器移植にクローン技術、IPS細胞の誕生と我々の生命倫理観は技術の進歩とともに間違いなく揺るがされています。当時にしても、ニュートン的世界観からアインシュタイン的世界観へ、幾何学にしてもユークリッド幾何学から非ユークリッド幾何学へ・・次々と新しいモデルが出て真理を更新されていくという事は、その真理はもう神が与えたものじゃないですよね。間違いなく人間が自らの力で生み出した真理です。科学の進歩により、ニーチェの考えが正しかったことがこうして証明されていくことになります。

そして、後の実存主義に繋がっていくのです。

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